抄録
前稿(村山 2020)に引き続き、秋田県におけるクルーズ観光の持続的な発展に向け、本稿では訪日クルーズ客及び秋田市内の観光関連事業者からの調査結果を記す。2019年夏に秋田港を訪れた外国籍クルーズ船の乗客・乗員に満足度、県内消費額、秋田県内での行動等のアンケート調査を行い、さらにクルーズシーズンの終了した同年冬に、秋田市内の主たる観光事業者からクルーズ客の消費行動等についての聞き取り調査を実施した。訪日クルーズ客の秋田での満足度は非常に高いが、多くの課題やチャンスも明らかになった。インターネット上の英語の観光情報の拡充、秋田市内の標識、飲食店のメニュー、文化施設や商品説明の英語表記、喫茶店等の休憩施設、Wi-Fiのアクセス拡充などが求められている。その一方で、訪日クルーズ客がもたらす経済効果は比較的低く、クルーズ船の係留時間の延長、外国人向けの新商品、秋田の伝統工芸などの「体験」商品の開発など、受入れ側のリスクを抑えながらも、訪日クルーズ客の経済活動を促進する方策が望まれる。