2021 年 12 巻 p. 35-52
秋田蘭画は 18 世紀の洋風画で武人画であり、その厳格な作風は、当時流行した西洋の透視遠近法を取り入れ、更にレンズで覗き見る眼鏡絵とは一線を画していると見られがちだが、風景図の主題や構成に関しては、近似点がみられる。特に主題は、浮世絵版画で盛んにとりあげられた江戸や江戸近郊の景勝地に取材しており、文学的発想とも不可分である。この論稿では近年千秋美術館収蔵となった秋田蘭画の眼鏡絵作品を通して、江戸洋風画の原点となっている秋田蘭画に於ける風景図と、眼鏡絵との関係についての調査研究結果を述べる。