印度學佛教學研究
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占術文献におけるpapa-について
熊谷 孝司
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キーワード: 占術
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2011 年 59 巻 3 号 p. 1097-1102

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抄録

古代インドの文献には,多岐に亘って「予兆」「前兆」に関する言及が見られ,その理解は,当時の世界観を理解するのに重要な意義を持っている.しかし,予兆集成文献群のうち著者,年代が明らかにされ文献史上に位置づけられているものは,公刊されている文献ですらまだまだ少なく,さらに,その重要性にもかかわらず写本の状態にと留まっている文献も多数存在する.papa-は,これまで刊行されてきた文献には,多くは現れないが,予兆が生じる原因となる重要な概念である.また,同様の概念に,apacara-があるが,papa-はapacara-とともに使用されることが多く,両者は密接に関係すると思われる.本研究では,一部が公刊されているのみのGargasamhita写本の研究成果をも踏まえつつ,これまで重要視されてきた主たる予兆集成文献郡であるAtharvavedaparisista 70b,70c及びBrhatsamhita 45,Matsyapurana 228-237.Gargasamhita 39を中心に比較検討し,予兆を生じる原因であるpapa-およびapacara-の概念を再考することにより,代表的予兆集成文献のそれぞれの立場を明らかにした.また,Gargasamhitaの校訂時には,Adbhutasagara,Adbhutadarapanaに引用されているGargaの説を,写本を補足するものとして使用した.その結果,Atharvavedaparisistaは,祭官の教科書としての立場,Brhatsamhita,Matsyapuranaの二者は,王権と関わる世俗的立場,Gargasamhitaは,王と対等の立場であることが明らかとなった.また,Gargasamhita 39の本文の一部を資料として提示した.

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© 2011 日本印度学仏教学会
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