日本健康開発雑誌
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助成研究
乳児期の温泉入浴が皮膚機能と食物アレルギー発症に及ぼす影響
古賀 寛史
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2022 年 43 巻 p. 61-65

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抄録

背景 国内の温泉湧出地域では習慣的に温泉入浴が行われてきたが、乳児期に温泉入浴を行う安全性や有益性は明らかになっていない。

方法 当院で出生した健康な出生体重2500g以上の正期産新生児を対象に前方視的コホート研究を行った。温泉入浴習慣の有無による2群間で乳児期の皮膚機能、食物アレルギー発症、食物特異的IgE・TARC値を比較した。参加者全員に同一のスキンケア指導とスキンケア製剤の供与を行った。主要評価項目は皮膚機能検査値、二次評価項目はEASIスコアと食物アレルギー発症と定めた。

結果 温泉入浴群13例と水道水入浴群11例で表皮水分蒸散量と皮膚表面pHに差を認めなかった。4ヶ月時の前胸部の角層内水分量は水道水入浴群(中央値217μSiemens)と比較して、温泉入浴群(中央値281 μSiemens, P= 0.037)で有意に高かった。2群間で乳児期の食物アレルギー発症者は認めなかった。温泉入浴群の1ヶ月(中央値0.2)、12ヶ月(中央値0.1)のEASIスコアは、水道水入浴群の1ヶ月(中央値0.4, P = 0.034)、12ヶ月(中央値0.4, P = 0.042)と比較して有意に低かった。食物特異的IgE値、血清TARC値は両群間で差を認めなかった。

考察 適切なスキンケアを行っていれば乳児期の温泉入浴は皮膚機能障害や食物アレルギーと関連しない。

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© 2022 日本健康開発財団
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