印度學佛教學研究
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北伝仏教文献の燃燈仏授記物語
――分類の試み――
松村 淳子
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2011 年 59 巻 3 号 p. 1137-1146

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抄録

燃燈仏授記物語は,釈迦仏が過去世において仏陀になりたいと誓願を発し,燃燈仏からその成就を予言される物語で,初期仏教の悟りの理想から大乗仏教的な菩薩行重視への転換点を画する重要な物語である.筆者は,すでにパーリ仏教文献中の燃燈仏授記物語(スメーダ・カター)を総括し,Apadanaには明らかに北伝文献とのつながりが見られることを指摘したが,北伝仏教資料では伝承数が多く,物語のプロットも様々で複雑であり,これらを整理する試みは成功しているとは言い難い.本論文では,北伝資料中,物語の基本的プロットを含んでいるものを改めて列挙し,それらを菩薩の名前(名前がないもの,Meghaとするもの,Sumatiとするもの)によって3種類に分類し,さらにプロットの最初の要素である,燃燈仏の出生・成道・王都の訪問の部分を比較した.結果として,菩薩の名前の違う伝承では,プロットの内容もそれぞれ異なって対応していることが確認できた.また,これまでの研究で見過ごされていた『大寶積經』中の「菩薩蔵會」の燃燈仏物語を取り上げ,玄奘訳と宋の法護訳,ならびにチベット語訳を比較し,チベット語訳が法護訳に近いが,法護が原文をどのように誤解して訳したかについても解明した.

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© 2011 日本印度学仏教学会
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