印度學佛教學研究
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DaudipadaとGuhyavali
倉西 憲一
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2014 年 62 巻 3 号 p. 1267-1271

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抄録

インド後期密教の文献であるGuhyavaliはわずか25偈からなる小品である.このGuhyavaliおよび著者Daudipadaはこれまで全く研究されてこなかった.Guhyavaliは短いながらも,インド後期密教の重要な教理「自加持」をメインテーマとしている.本稿では,まずGuhyavaliを引用する文献のリストを挙げる.中でも,10世紀頃のAdvayavajraや13世紀のRatnaraksitaなど著名な学僧が著作に重要な教証として引用しており,また顕密両方にまたがる教理的アンソロジーSubhasitasamgrahaにも五偈収録されていることから,Guhyavaliの重要性はインド後期密教史の中である程度認知されていたことがわかる.それはむしろ,当時の密教者たちが25偈という小品を記憶することで「自加持」の教理を学べる事実にGuhyavaliの重要性・便利さを見出したのであろう.続いて,Daudipadaという名の意味について推論を展開する.アパブゥランシャ語の可能性もあるが,サンスクリット語のdudi(亀)が変化した形とするならば,亀人という意味になる.Guhyavaliを引用するPadminiはJadavipadaという別名やJadaというタイトルを彼の名前に付している.Jadaは「愚鈍」「動きの鈍い」という意味である.もしもJadaviがJada+vinであって,前述のdudi(亀)から派生したDaudiと同義語であるならば,daudiがサンスクリット語のdudiから派生した語と考えられていた可能性がある.

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© 2014 日本印度学仏教学会
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