『根本説一切有部律』は,「律(経)分別」(Vinaya-vibhaṅga),「律事」(Vinaya-vastu),「律雑事」(Vinaya-kṣudraka),「ウッタラグランタ」(Uttaragrantha)という4部構成であることが知られている.本稿は,徳光(Guṇaprabha)著とされる『律経』(Vinayasūtra)に対する『律経自註』(Vinayasūtravṛtty-abhidhāna-svavyākhyāna)において,『根本説一切有部律』の構成について言及している箇所,すなわち,第1章「出家事」第98経の註釈を取り上げ,「律事」ならびに「ウッタラグランタ」の構成についての記述を紹介するものである.なお,当該箇所は『律経』「出家事」研究会によってテキストならびに和訳が出版されているが,近年の研究成果における指摘にしたがい,本稿では一部訂正を施している.