印度學佛教學研究
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仏教論理学派が批判するジャイナ教論師について――特にスマティを中心に――
小林 久泰
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キーワード: Sumati, Tattvasaṃgraha, inscription
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2021 年 69 巻 3 号 p. 1105-1111

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抄録

仏教論理学派がジャイナ教論師を名指しで批判を行う例は極めて少ない.それにもかかわらず,カマラシーラは『タットヴァ・サングラハ・パンジカー』の中で9回にわたり,ジャイナ教徒スマティの名前に言及し,彼の学説を批判している.スマティ自身の著作がすでに散逸していたということもあり,ジャイナ教の伝統の中でも,スマティが言及されることはほぼないに等しい.それにもかかわらず,何故カマラシーラはこれほどスマティを批判の対象としたのか.このような問題意識に立ちつつ,本稿では,そもそもスマティとはどのような人物かということをインドの碑文をもとに考察した.

結論として,MalvaniaやMahendra Kumar Jainなどがスマティを論じる際に用いたグジャラートの碑文に登場するスマティ(セーナ・サンガ所属)と南インド・カルナータカに残される碑文群に登場するスマティ(ドラミラ〔ドラヴィダとも言う〕・サンガ所属)は全くの別人である可能性が高いことを明らかにした.その上で,同じくカマラシーラの批判の対象となっている他のジャイナ教論師サマンタバドラやパートラケーサリンが同じドラミラ・サンガに所属していることを考えると,後者のスマティがおそらくカマラシーラの論争相手であると考えるのが自然であるということを指摘した.

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