印度學佛教學研究
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Bhāvanāvivekaにおけるsāmānādhikaraṇya議論
斉藤 茜
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2022 年 70 巻 3 号 p. 1071-1076

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抄録

 マンダナミシュラ(7-8世紀)の『バーヴァナーの分析』(Bhāvanāviveka)の冒頭は文法家によるsāmānādhikaraṇya批判によって幕を開ける.元はパタンジャリが動詞語根が行為を表示することの証左として用いた議論で,クマーリラはこれをバーヴァナー論証に読み替えて,行為を表示するのは語根ではなく寧ろ人称語尾であると主張してパタンジャリに反旗を翻した.マンダナは文法家の仮面を被って,クマーリラのsāmānādhikaraṇya議論の不備を指摘する.但しその目的はバーヴァナーの存在の否定ではなく,より隙のない理論によってクマーリラのバーヴァナー理論を補強し改善するという意味合いが強い.本稿では,クマーリラのsāmānādhikaraṇya議論の何が問題であったのかを先ず見極めた上で,マンダナが提示した解決策を検討する.具体的にはパタンジャリが既に指摘していた〈普遍と特殊の関係〉がより厳密に考察されていることを示すのを本稿の目的とする.

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© 2022 日本印度学仏教学会
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