印度學佛教學研究
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Siddhadravyaの定義と用例
藤井 明
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2022 年 70 巻 3 号 p. 1163-1168

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抄録

 密教経軌,特に儀礼の作法を説く儀軌中には,「宝物」などの漢訳で示されるsiddhadravyaについての記述が散見される.本論文では,このsiddhadravyaが具体的にどのような物を指しているかを,いくつかの用例を提示しながら明らかにすることを目的としている.これまでこの術語に関して明確に示された論述は見られず,またMonierには“any magical object”という意味が挙げられているのみであったが,いくかの密教経軌の用例から判断すればsiddhadravyaの定義としては大まかに以下の二つの分類が提示され得ることが明らかとなった.

 (1)修法の過程,あるいは結果としてナーガ,ウマー,アプサラスやヤクシニーなどから受け取る物を指す.このsiddhadravyaはrasaやrasāyanaと並列して挙げられることがあり,雄黄(ldong ros)がsiddhadravyaの一つとして言及される.(2)修法の結果,修法の対象から生じる物,あるいは修法の対象が変容して得られる物を指す.修法の対象(死体)の口から得られた雄黄(ldong ros)はsiddhadravyaとして言及され,また修法の対象(死体の舌)が剣(ral gri)に変容した場合には剣がsiddhadravyaと呼ばれる.siddhadravyaが分割可能な物か否かで修法の内容が異なることも説かれる.また,このsiddhadravyaによって「空を飛ぶ」といった力を得ることも説かれる.

 以上が現時点で可能なsiddhadravyaの定義である.以降の研究において,新しいsiddhadravyaの記述が認められた際には,この定義を修正する必要があるが,現在の所はこの定義を当てはめ得るであろう.

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© 2022 日本印度学仏教学会
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