印度學佛教學研究
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『集量論』4章蔵訳の一断面――Kanakavarman訳についての覚書――
岡崎 康浩
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2023 年 71 巻 3 号 p. 1052-1059

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抄録

 Pramāṇasamuccayavṛtti(PSV)は,現在KanakavarmanとDad pa’i shes rab(K)による蔵訳とVasudhararakṣitaとSeng ge rgyal mtshan(V)による蔵訳の2種の蔵訳でのみその全体像を見ることができるが,両蔵訳には,齟齬がかなり存在し,そのいくつかはPSVの理解を妨げている.とくに4章には,一方の蔵訳に存在し,一方の蔵訳には存在しない箇所がいくつかみられる.その多くは一方の蔵訳の欠落,または錯簡と考えられるが,その中で規模が大きく内容的にも重要なPramāṇasamuccaya(PS)4.4と4.5の間のK訳については,単純にV訳の欠落と考えることができない.それはこの箇所のK訳の持つ特異な性格にある.このK訳PSVとその注釈Pramāṇasamuccayaṭīkā(PST)を比較したとき,PSTにはこの箇所のPSVを引用し説明したと思われる箇所がなく,PSVの内容をただ敷衍していると思われることであり,逆にPSVがPSTの本文から抽出されたようにさえ見えることである.また,内容から考えて,この箇所はPS4.4とその前後のPSVで例示が同延関係を示すとした場合の難点を論じた議論の補完的なものであり,PSV自体はこの箇所がなくても意味が通じるものである.したがって,この箇所のK訳PSVは竄入の可能性が疑われる.

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