印度學佛教學研究
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東アジア仏教における中世女性の文解力と教育の意味
孫 眞(政完)
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2024 年 72 巻 3 号 p. 1133-1139

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抄録

 東アジアの伝統的な文化や近世以前の社会において,女性の読み書きや教育は年齢や地域に関係なく明確に軽蔑され,女性の教育について否定的な風潮であった.他の社会と同様に,東アジアの伝統的な社会においても,女性は教育の面で不利な立場に立たされていた.これは個々の女性の問題にかぎらず,女性の思考や歴史との関係にも影響を与えた.長い間,特定の階級のごく少数の女性のみが教育を受ける機会を得た.才能のある多くの女性は,自分自身や他人に自分に思考能力があることを証明するために努力を重ねなければならなかった.東アジア仏教の伝統的な社会における女性の生活と教育の特徴は,歴史的文献やその他の文献から見られる女性に関連する情報と時代によって異る.伝統的な社会においての女性の生活の特徴を考慮すると,寶唱によって記録された『比丘尼伝』は以下の点を示唆する.まず,313年から516年にかけて活躍した社会的エリート出身の仏教尼僧の65名の伝記で示されるように,中国の仏教尼僧の台頭は初期段階では主に社会的な指導階級であった.第二に,宗教的実践者として必要な教育や活動は,理論的には初期の中国仏教の尼僧たちにも開かれていた.当時の彼女たちの識字能力に基づいて,尼僧が仏教の儀式や実践から排除されることはなかったとみられる.第三に,『比丘尼伝』に収められた仏教尼僧のうち80%以上が識字能力を活用できた事実は,初期の中国仏教だけでなく当時の中国社会においても,尼僧が自らの才能を開発し活用する自由と機会を享受されていたことを示す.従って,家庭内での非公式な教育に加え,仏教寺院も女性の教育が行われた「場所」と考えられる.

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