2024 年 72 巻 3 号 p. 984-991
仏教論理学者は,証因(liṅga, hetu)の有すべき主題所属性・肯定的必然性・否定的必然性という三条件(trīṇi rūpāṇi)を総称して「三相」(trairūpya)と呼ぶ.Sanderson博士は,“The meaning of the term trairūpyam in the Buddhist pramāṇa literature”と題する論考において,同用語の伝統的な解釈に異を唱えて新解釈を提示した.
(1)伝統的解釈
trirūpaは,「3」を意味する数詞triと「相,条件」を意味するrūpaから構成される,証因を指示する属格bahuvrīhi(trīṇi rūpāṇi yasya)である.この属格bahuvrīhiとしてのtrirūpaに属性接辞ṢyaÑがʻtasya bhāvaḥ’の意味で導入され,trairūpyaが派生される(trirūpasya bhāvas trairūpyam).証因の限定者としの「三相」を表示する.
(2)Sanderson解釈
trirūpaは,triとrūpaから構成される「三つの相,条件」を意味するkarmadhārayaである.このkarmadhārayaとしてのtrirūpaに意味ゼロのṢyaÑが自己が導入される基体(prakr̥ti)の意味(svārtha)で導入され,trairūpyaが派生される.基体の意味である「三相」を表示する.traikālyaが過去・現在・未来の「三時」を意味するのと同様である.
対象Xに対して語Yが適用されるときのXの限定要素(viśeṣaṇa)が〈属性〉(bhāva)である.tadvattvaṃ tad eva(x + vat + tva = x)と定式化される属性接辞の意味論は,上記の伝統敵解釈を支持すると言える.