印度學佛教學研究
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Bhaviṣyapurāṇaの写本について
永井 悠斗
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2024 年 72 巻 3 号 p. 979-983

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抄録

 本論文はBhaviṣyapurāṇa(以下BhaviṣyaP)の第I巻(Brāhmaparvan)を対象として,刊本の問題点を指摘し,写本利用の必要性を提案する.このプラーナについて,従来の研究は19世紀末のボンベイ版に由来する刊本を用いてきたが,この刊本には写本の異読情報が欠けているという問題があるのみならず,テキストの誤りや詩節の欠落といった不備も知られていた.このため,写本を利用して刊本の不備を解消することが望まれるが,BhaviṣyPの写本に関する研究は未だ途上にあり,写本に関する詳細な調査が待たれているのが現状である.本論文の目的は,今回確認されたオンラインで利用可能な三つの写本について報告し,BhaviṣyaPの写本状況の一部を明らかにすることである.まず,本論文は,従来の研究では知られていなかったこれらの三つが,写本カタログが報告していた他の写本と近しい関係にあることを確認する.さらに,刊本におけるSauradharmaに関する章全体が上記の三つの写本には存在しないことを指摘する.従来,刊本と写本の違いとしては,章の数や構成が異なること,さらに,刊本がSaptamīkalpaに関する章で終わるのに対し,いくつかの写本はそれに続くAṣṭamīkalpaやNavamīkalpaに関する章を有している,ということが知られていた.しかし,本論文は新たな事実として,上記の内の二つ写本において,そうした章が,刊本の最後にあたる第216章に続く形で加えられているのではなく,Saptamīkalpaに関する章の中でもとくにSauradharmaを扱う箇所としてまとめられる第151–216章と入れ替わる形になっている,ということを明らかにする.最後に,今回写本から確認された重要な異読として,先行研究において解釈困難とされていたBhaviṣyaP I.139.46abにおけるpatitaḥ syātという刊本の読みに対するpitā tasyāという異読,そして先行研究がゾロアスター教の開祖との関連性を指摘しているBhaviṣyaP I.139.43cに現れる人名に対する異読の二つを紹介する.

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