印度學佛教學研究
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金剛寺本新発見『安般守意経』と『仏説大安般守意経』
大正蔵T602における「経」と「注」との区別の試みとして
釋果暉(洪鴻榮)
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2006 年 54 巻 3 号 p. 1226-1231

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抄録

『仏説大安般守意経』の研究は, 最初期の中国仏教あるいは格義仏教を解明する最も重要な手がかりになる.『仏大安般守意経』の研究の画期的な展開をもたらしたのは, 大阪河内長野市にある金剛寺所蔵本『安般守意経』の発見である. しかも, 同寺に発見された安世高訳の『仏説十二門経』『仏説解十二門経』が同時に『仏説大安般守意経』の解明にも大変役に立つ.
高麗蔵の奥書に示されているように,『仏説大安般守意経』の全文には経文と註が大変混沌たる構文で溢れており, 如何に「本文」と「註」を見分けるかは, 大変困難な課題である. 両経の関係を明らかにするには, 一文字一文字の対応する関係のみを見るのではなく両経の内容から精査されなければならない. また, 謝敷の『安般序』と道安の『安般注序』には『仏説大安般守意経』(あるいは『小安般経』) と深い関係のある『修行道地経』が言及されている. さらに, 荒牧典俊 (1993) の『出三蔵記集訳注』からも「大小安般経」は竺法護訳『修行道地経』の「数息品」に相当する禅観を説いたもの, という重要な示唆があった. したがって,『仏説大安般守意経』を研究するためには,『修行道地経』を重視しなければならない.
そこで本発表では新発見『安般守意経』に類似する『仏説大安般守意経』の箇所を「本文」とし,「本文」に対する解釈を「註」と仮説設定し,『安般守意経』,『仏説大安般守意経』『修行道地経』という三つの経の内容を論究することによってこの仮説を検証する.
『修行道地經』《數息品》(T. 606, p. 215c21-216a1)
「(1) 何謂修行敷息守意求於寂然. (2) 今當解説數息之法謂數息. (3) 何謂為安. 何謂為般. 出息為安. 入息為般.」
『佛説大安般守意經』(T. 602, p. 165a3-6)
「(1) 道人行安般守意欲止意. 當何因縁得止意. (2) 聽説安般守意. (3) 何等為安. 何等為般. 安名為入息. 般名為出息.」
『金剛寺一切経の基礎的研究と新出仏典の研究』(p. 188, line 61-62)
「何等為安. 何等為般. 何等為安般守意. 入息為安. 出息為般」

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