日本感染管理ネットワーク会誌
Online ISSN : 2759-7822
実践活動報告: 第12回学術集会
慢性期病院におけるCOVID-19の家庭内感染による職員の陽性率と就業停止期間についての現状報告
藤井 智恵
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2025 年 21 巻 p. 17-23

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抄録

慢性期病院は,高齢者が多く加齢による機能低下や認知症を含む様々な疾患が複合的に現れるため長期入院となり,患者間の交流など一定の生活時間を共有する特徴から,1例の感染から集団感染を起こしやすい.当院では新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)による対策として面会制限をしていたが,入院患者に陽性者が発生し職員からの感染と思われる事例を複数認めた.また,陽性者の多くが家庭内感染との報告があり,2023年8月以降は家庭内での陽性者発生時の就業制限については個々の病院で判断し対応することが求められた.当院における職員同居家族陽性者から職員が感染することがある現状から,就業停止について検討した.はじめに,職員同居家族陽性者と陽性職員について4か月間調査を実施し,その結果職員の就業停止期間を職員同居家族陽性後3日目までとし,4日目と5日目にSARS-CoV-2検査で陰性を確認し,出勤可能とする基準を設けた.基準設定後4か月間の職員の陽性率は50.0%,陽性までの期間は1–5(中央値2)日目であった.3日目までに72.7%,5日目までに全員が陽性となった.2023年5月~12月の8か月間の調査では,当院の家庭内感染による職員の陽性率は42.3%で,陽性となるまでの期間は平均3.3(中央値2.5)日目,5日目までに90.9%が陽性となった.新たな基準設定後,家庭内感染した職員は就業停止期間中に陽性となり,院内での全事例に就業停止した職員との関係性は認められず,院内への持ち込み防止効果が示唆された.

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