2025 年 21 巻 p. 28-33
2019年から全世界に感染拡大した新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)は,2020年には日本国内で拡大した.AセンターでのCOVID-19対策を振り返るため,定性調査を実施し記述的分析を行った.2020年1月から五類に位置付けられる2023年5月までを次の3期に分け自由記載のアンケートを実施した.I期:2020年1月~2月(初症例受入前後),II期:2020年3月~2021年3月(初症例受入から1年),III期:2021年4月以降.全部署の所属長を対象に院内メールにてアンケートを送信し回答を得た.COVID-19対策本部(以下対策本部)に向けた要望が3期通して最多となった.I期,II期では組織体制作りに関わることに意見が集中した.対策本部は幹部職員で構成され,病院の方針策定や決定の役割を担う.COVID-19の対応初期に組織体制構築に難渋し,十分に改善できないまま1年間が経過した状況が明らかとなった.III期の始まりに幹部職員や感染対策室職員に入れ替わりがあり,対策本部が改めて立ち上がった.その結果事業継続計画が策定される等,対応初期の課題は解決に向かった.感染対策室に対してはリソースの役割を果たしていたとの評価があった.一方で,職員の不安が強い時期のラウンドや情報共有システムの構築が課題に挙がった.病院としての方針決定および情報周知が,病院一丸となって取り組む際には必要不可欠と再認識できた.今後の新興感染症発生時に向け,机上訓練や実地訓練を実施していく.