日本感染管理ネットワーク会誌
Online ISSN : 2759-7822
実践活動報告: 第12回学術集会
手術時手洗い用逆浸透膜水の細菌検出に関する検討
横山 周大石 みどり
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2025 年 21 巻 p. 6-10

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抄録

当院手術室では,手洗い用水に逆浸透膜(Reverse Osmosis Membrane 以下RO)水を用いているが,細菌検出を複数回認めた.本研究では,手洗い用水の細菌検出状況を調査し,RO水水質管理の具体的な感染対策を考察した.2022年8月から2023年12月の期間に,手洗い場8か所から採取し,塗抹培養検査を実施した.対象のRO水スクリーニング検体75件を,細菌検出の有無で検出群と非検出群の2群に分類し,採取月,採取者,手術件数,1週間以内の手洗い装置内部の熱水消毒実施率について比較検討した.また検出群においては,検出を認めた手洗い場の使用頻度と菌種について追加検討した.75件中10件(13.3%)で細菌検出が認められた.1週間以内の手洗い装置内部の熱水消毒は,非検出群において60件(92.3%)で実施されていたのに対し,検出群では6件(60.0%)と有意差を認めた(p=0.0152).追加検討では,細菌検出を多く認めた手洗い場は,手術件数が多い手術室と,毎朝器械展開に用いる手術室に隣接しており,使用頻度が高かった.同定された菌種はBrevundimonas vesicularisPseudomonas alcaligenes等の従属栄養細菌が主であったが,口腔内常在菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansも1件検出された.これらの結果よりRO水における細菌検出は,製造機器周辺や手洗い場周辺の環境からの汚染によるものと推察された.そのため1週間以内の確実な熱水消毒の継続とともに,使用頻度の高い手洗い場を中心とした蛇口部分や周囲環境の衛生管理,RO水採取者への教育が必要であると考えられた.

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