2011 年 2 巻 p. E1-E29
本稿の目的は、制定法としてのプロバイダ責任制限法制と私的主体の行う自主規制の間での重層的なガバナンス構造を、著作権分野の現代的課題を中心として国際的な観点から検討することにより、プロバイダ責任制限法制の現状に対する実質的な理解と、今後の制度設計のために必要な分析視角を提示することである。まず、全体的な問題状況を把握するために米国・EU および英国の制度枠組を概観した後、制定法と自主規制の相互作用に関連の深い「過剰削除」「ブロッキング技術の導入」「ISP レベルでの対応」の3つの論点の検討と、我が国のプロバイダ責任制限法の状況との対比を行い、最後に今後の制度設計のあり方に対する示唆を論じる。