情報通信政策レビュー
Online ISSN : 2435-6921
学術論文
中国競争法における双方向市場(two-sided market)の画定
― 奇虎 360 対テンセント事件を中心に ―
鄭 双石林 秀弥
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2014 年 9 巻 p. 144-177

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抄録
中華人民共和国反独占法(中国の独占禁止法。以下、「反独占法」とする。)が2008年8月1日より施行されて以来、これに基づく民事訴訟の大部分は社会の大きな関心を集めていなかった。その中で、奇虎360対テンセント事件は特に注目されてきた。この事件の判決は、法学者、経済学者、インターネット分野の専門家が出廷したこと、多数の証拠が提出されたこと並びに判旨が極めて詳細に述べられていることなどから、反独占法の執行において画期的な事件と評価できる。そこで、本稿では奇虎360対テンセント事件について紹介する。そのうえで、双方向市場(two-sided market)の理論の観点から関連市場の画定に関して反独占法がどのように適用されてきたのかについて論じる。単方向市場で用いられてきたSSNIP テスト(Small but Significant and Non-transitory Increase in Price、いわゆる仮想的独占者テスト)を双方向市場かつ商品・役務の対価が無料である市場において、そのままで適用することは難しい。そのため、双方向市場においてもSSNIP テストを適用することができるのかについて考察する。
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© 2014 総務省情報通信政策研究所
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