電氣學會雜誌
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電氣機械の上昇温度單一定格と二重定格との比較
竹内 壽太郎
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1923 年 43 巻 420 号 p. 617-637

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抄録

從來日本は習慣的に電機の定格に二重定格を使用して居つた。
二重定格とは即ち二つの異なる負荷に依つて其容量を決定する事で、先づ全負荷にて定格し次に過負荷で一時間とか二時間とか又はそれ以上の時間運轉せしめて再び定格を行ふのである。
此如き定格方法は單に其電機の定格を不精確に且つ不明瞭ならしむろのみならず却つて複雜過ぎる故、1913年にベルリンに於ける萬國工藝委員會に於て電機を單一定格になつて評價する事を決定した。單一定格とは、豫め定められたる全負荷重の出力に於ける上昇温度のみに依つて機械の容量な評價するのである。日本も當時此事な認めたのであつた。
此後間もなく世界戰爭が起つた爲此會議は中止の模様であつたが、1919年更にロンドンに會議が開かれて此定格の問題を再議した結果、やはり單一定格を採用することに決した。又日本に於ても1921年に我委員會は此事の重大である故再ひ東京、關西、及び九州に於て討議した結果何等從前決定したる事を變更する必要無しと認め單一定格を採用する事を決議した。然れども遺憾ながらまだ單一定格に對して多くの人は誤解を有して居る故、著者は茲に損失の分配と上昇温度の關係に就いて新しい考察を試み之を發表する事にした。鐵損及び銅損に元來同じ塲所に起るもので無く鐵損は鐵心中に銅損は捲線の中に起るのである、然るに鐵心の表面は大部分外氣にさらされて居るが、捲線は絶縁物に依つて蔽はれている。從つて此二種の損失を同樣の影響として考へる事は出來ない。即ち此二損失は各々別々に異つた塲所に起るものとして計算しなければならないのである。著者は、此二つの損失に對し二つの異つた塲所になる二つの聯立方程式を立てて、此問題な解いた。此方程式の一つは鐵損を基とし。他の一つは銅損を基として考へたもので又尚此兩者は互に熱的に關係あらしめ兩損失の性質に對する十分完全な考へを式中に入れた。
斯くして此新理論になつて上昇温度と能率との關係な研究したるに兩損失分配の割合が同じであれば一機械の能率は上昇温度に無關係である事を知つた。又著者は簡單に損失分配と上昇温度及び出力との關係を求めろ新圖式法な考案した。終りに實驗の結果を擧けて理論の確かなる事を示し、且二重及び單一定格の比較を上記實驗及び理論になつて研究し單一定格が凡ての點に於て二重定格に優ることを明かにした。斯く著者は我々從來の二重定格をすてて單一定格を採用せん事を希望する。

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