電氣學會雜誌
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料金決定の理論
馬場 敬治司城 正木
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1924 年 44 巻 433 号 p. 725-765

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抄録

電氣供給事業は今日我が國大工業の一となり、而して其の業務の公共的性質と其の企業の獨占的傾向とは、更に、電氣料金問題の解決を國民經濟上一層重要にするものと云ふを得べし。此の問題は、今日、獨り我が國のみの問題に非ず、亦世界的の問題にして、殊に米國に於ては、是が論義最も盛なりと雖も、未だ凡ての點に於いて完全に解決せられたりと云ふを得ず。思ふに、此の問題も亦、其の解決の基礎を、先づ正確なる理論的研究の上に置かざるべからず。本稿は、今日の社會に於いて合理的なる料金を決定せんとするに當りて必要なる一般的基礎を述べんとするものなり。
斯くて以下第一章に於ては、料金決定の標準たる生産費説及び價値説(更に共の一變形なる最大利得説)を檢討し、單に電氣に對する需要家の主觀的價値夫れ自身に準據して料金に差等を設けんとすることの不可なるを説明し、料金は之が差等を辯護すべき正當の理由無き限り原則として生産費説に據るべきことを述べ、而して今日の實際に於ては、主として生産費説に據る料金の決定を原則とすべきことを述べたり。
次いで第二章は、生産費説に據る料金決定の一般的方法を説述するものにして、まづ、ホプキンソン以後今日に到る迄の主要なる料金學説を叙し、需要費用、消費量費用及び需要家費用の三種の費用と之に應ずる三種の料金要素を區別すべきことを述べ、更らに進んで、各種費用の一々に就き考察して之を上記三種の費用に分類し、次いで此の三種の費用の配賦を論じ、需要費用の配賦に就てはゴールドマンに其の端を發し次でアイゼンメンガー之を完成せる方法即ち氏の所謂相當需要に依る方法を採るべきことを明かにし、尚之れより氏の導かざりし二三の結論を出せり。
最後に、斯くして得たる一般理論を更に實用的のものたらしむるが爲めの簡便法に就き考察し、需要家區分の原理其他の單純化に就きて述べたり。

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