電氣學會雜誌
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ペーターゼン接地線輪に依り補償されたる長距離送電線の接地に就いて(補稿)
大槻 喬
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1925 年 45 巻 444 号 p. 574-598

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抄録
之は大正十三年九月號(第803頁乃至第847頁)掲載の本題に對する所論の補稿である。先づ接地線輪が送電線の接地に際する充電電流を吸收補償し、之が線電流の分布に及ぼす影響を物理的に説明した。
次に同一の分布常數を有する線路の種々の長さに對する中性點リアクターの所要補償値を求め、又補償された接地に際する接地電流並に中性點電壓の値を他の通常の中性點固定法なる抵抗接地式無接地式及直接接地式に於けるものと比較し、接地線輪に依つて有效なる補償を期し得べき實用上の線路區分の長さを求めたのである。一般に一個の線輪に依つて全線路の補償を行はんとする場合には其の全長l=π/2βs粁の時又二個の線輪に依る場合はl=π/βs粁の時、其の接地電流の値には共振現象を呈するに至るものである。但しβs=√b11[x11+(n-1)x12](近似値)である。線路の全長lの値が同一の分布常數の下に更に此等の範圍を超過すると所要中性點リアクターは靜電容量的となるのみならず、次第に消弧作用を完たからしむべき可能性を缺く樣になるものである。線路の兩端二個の線輪補償に依る場合其の補償線路の長さは一個の線輪補償に依る場合の約倍に取り得る譯であるが、此の場合受電所側の接地に際して中性點の受くる電壓ストレツスが可なり高くなつて來るものである。此等の點からして實用上の補償線路區分の長さとしては何れの場合共大體l=π/4βs粁位迄と見做すが安全と思考される。100キロヴオルトの單相式若しくは三相式送電線に對しては此の値が約 500 粁即ち 300 哩位になる。
最後に第三高調波起電力の影響に關し、相式送電線の平常の運轉状態に於て其の中性點に通ずる第三高調波電流が接地線輪に依り如何に抑壓さるゝかを他の中性點固定法に依るものと比較し、其の大いさが如何に線路の分布常數並に其の長さに依つて左右さるゝかを指摘し、併せて一般送電線の接地に際しては其の長さに應じて第三高調波起電力が其の接地電流に共振現象を誘致すべきは已むなき次第であるが、之も決して接地線輪其のものゝ施設に基因するものではなくして、一に線路常數の左右する所である事を明らかにしたものである。
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