抄録
短波長を以て太平洋横斷無線通信を行ふには幾何の電波長を使用するがよいかを調査し又特定の距離に對して書夜同一の感度を輿へる波長を見出すがために、太平洋上に於いて短波長通儒試驗を行つた。此目的のために汽船春洋丸、芝公園遞信官吏練習所、埼玉縣岩槻受信所及び北海道落石送信所へ夫々30米、21.5米、40.5米及び43並びに115米の送信機を置き、是等の各局は春洋丸が大正15年2月21日横濱解纜布哇を經て3月8日桑港着迄の間及び同船が同年3月17日桑港解纜布哇を超て4月2日横濱歸着迄の間の二回に互り、航行中は毎日定められた時間割に從つて2若くば3回宛發振し、春洋丸にては陸上局の又岩槻及び落石にては春洋丸の發振を聽取することゝし、各波長に就いて書夜に依る到達感度の變化状態を調査したが、夫等の成績から冬季に於いては40米を以つて夜問8400粁以上の遠隔の地點とも容易に交信し得ること、21.5米波は前者に比して遙かに書間の遠距離適信に適すること、スキツプ距離は波長が短い程大であり且書間よりも夜間に於いて著しいこと及び送受信所間の特定距離に關して書夜同一感度を異へる波長があること等を見出すことが出來る。