抄録
"低圧水銀蛍光ランプ(FL)の不点灯寿命は,ランプ点灯時や長時間放電による電極からのエミッター粒子の蒸発・散逸が主要因である.我々はFLの長寿命・高効率化について知見を得る事を目的とし,レーザー誘起蛍光(LIF)法によりエミッター粒子(Ba原子)の電極からの放出過程,及びその放電形態との関連性を一部明らかにしてきた.本報告では,FLの電極温度のBa原子放出特性への影響について議論する.
交流電源(100V, AC 60 Hz)と銅-鉄バラストにより点灯した透明直管FL(Panasonic製,民生用20W相当)において,LIF法により電極近傍のBa原子の時間・空間密度分布を測定した.さらに,分光感度較正した受光システムを用いてフィラメント電極からの700~820 nmの熱放射スペクトルを測定し,電極温度を推定した.
長期間使用したFLの電極近辺のBa原子密度と電極温度分布から,Ba原子はエミッターの残存した電極中央部に形成されたホットスポットからのみ放出され,電極の電源接続端のホットスポットでは温度が高いにもかかわらず,エミッター及び熱電子の放出が生じていないことが示めされた.電源側電極端のホットスポットでの温度上昇は主に放電電流によるジュール加熱であり,この部分の電力損失を低減することで長期使用ランプの効率的利用が可能であることが示された."