抄録
製品安全への顧客要望は大きく、割れにくいガラスを開発することは、新たな商品価値を生み出すことに繋がる。よって今回、ガラスの強度を向上させる為のコーティング技術の開発に取り組んだ。ガラスの理論強度は10GPa程度であるが、ガラス表面に形成された目に見えない傷が強度を低下させるため、実製品の強度はこの100分の1程度にすぎない。したがって、ガラス表面の傷の形成を防止することが、高強度のガラス(蛍光ランプ)を作成するポイントとなる。ガラス管表面の傷形成を防止するために、成型直後のガラス管を錫の化合物蒸気の中を通し、表面に酸化錫の薄膜を形成することを検討した。材料には(CH3)2SnCl2を使用した。(CH3)2SnCl2 + O2 → CH3Cl2 +SnO2の化学反応により、ガラス表面にSnO2の薄膜を形成することができる。SnO2はガラスよりも硬度が大きいため、傷形成の防止に有効である。処理時のガラス管温度と、成膜速度の関係を調査した結果、反応はArrhenius則に従い、温度が高い程、成膜速度が向上した。この結果から処理時のガラス管温度と、時間を制御することで、所望の膜厚が得られることを確認した。表面に10~20nm程のSnO2の薄膜を確認したガラス管の、3点曲げ強度を測定した。結果、未処理品に比べ、コーティング品では強度が約40%向上し、コーティング処理の有効性を確認した。