2016 年 15 巻 1 号 p. 25-31
東洋医学もまた,全人的医療の側面を有しており,以下のような点を踏まえ疼痛疾患へ貢献出来ると考えられる.
1)慢性疼痛疾患では外的環境からの刺激への脆弱性を伴い,気圧,気温などによる気象による増悪因子を軽減することで症状の安定化が得られる.この点に関して,東洋医学から外界からの刺激への過敏性を身体という内界から軽減していく方法がある.
2)精神症状に介入せずとも,東洋医学には身体症状にアプローチすることで自然に精神症状を治癒へ導く過程が存在する.東洋医学では,精神と身体は相似形であるという病態観から,精神疾患を身体から,身体疾患を精神からアプローチする手法がある.患者本人の精神的な苦痛に対しての直面化が難しいような場合に有効と考えられる.
3)東洋医学は,精神と身体が一体であるという観点をもともと有しており,診断,治療のアプローチは同じ体系に立脚している.そのため,東洋医学の技法を用いて人体観を再構成し,臨床医の“眼を養い”,時代の物質的側面からより健康な考え方へ向かう助けになると考えられる.
4)東洋医学の最も理想の治療として,対峙する人の存在そのものが人の病を治癒機転へと導くというものがある.この点は深い領域で実存と密接な関係があるのではないかと思われる.