2021 年 24 巻 1 号 p. 53-57
Medial tibial stress syndrome(以下,MTSS)は脛骨内側骨膜と筋膜の結合部の微細損傷と考えられており,MTSS 好発部位には長趾屈筋がヒラメ筋よりも高い割合で付着する。したがって,MTSS の発症には足趾底屈筋の機能や筋の硬さなどの力学的特性が関連する可能性があると考えられる。また,MTSS のリスク因子としてMTSS 既往歴が挙げられることから,既往者には再発を起こしやすい何らかの身体的要因がある可能性がある。我々は新規に開発した足趾底屈筋力測定装置およびせん断波エラストグラフィを用いて,下肢に疼痛を有さないMTSS 既往者の筋力および筋硬度の特徴を横断的に検討した。その結果,MTSS 既往者では長趾屈筋および後脛骨筋が硬く,第1 MTP 関節底屈筋力が大きいことが示された。これらの結果はMTSS と長趾屈筋および後脛骨筋の硬さの関連と,それに伴う代償的な第1 MTP 関節底屈筋力の増加を示唆している。