2017 年 16 巻 1 号 p. 47-54
機能的疾患の中でも線維筋痛症(FMS)は周囲からの理解を得られにくい.医療機関においても症状を理解してもらえず,苦しむ患者が多くいる.機能的病態は,生体のホメオスタシスの歪みから生じる.【症例】50代女性.FMS.起立性低血圧.10年間両親の介護を行い看取ったが,その後虚しさと誰の役にもたっていないという自己効力感の低下に嘖まれた.結果,希死念慮がでてきた.【経過】自己否定を肯定的に捉えるよう傾聴をしながら,痛みがある中でもできることを段階的に進めた.自分の性格形成と両親との関係を考える中で,若い日のフランクルの著作を思い出し,再読した.その経過の中で,ふたたび,実存性を見出した.以後,患者固有の意味に焦点を合わせたカウンセリングを継続した.【考察】本症例は,バリント方式の医療面接を行いながら,ロゴセラピーを併用した結果,患者が自らの意味に対し,勇気ある一歩を踏み出せた.そこには常に治療者(医師,心理士,他のスタッフ)の一貫した全人的な態度があったと考える.