筆者は,2016年4月の熊本地震で被災者としての体験をした.被災者の実存的危機を実存療法ではいかにして解決していけるのか.その経験も,いつか誰かの役に立てられると捉えることもできるだろう.ただ,そのように受けとめ,態度を転換するのは容易ではない.劣悪な環境がもたらすネガティブな影響を受けにくいレジリエンスの高い人は「危機の乗り越えを支えてくれる人と良い関係を生み出すこと」と「厳しい環境から価値をみつけ出し物事のポジティブな面を見出すこと」に長けているといわれる(萩野,2015).「人生において果たすべき務めがあるという自覚ほど,外なる苦労や内なる苦痛を超克せしむる力となるものはない.」と述べるフランクルは,人生の意味を見出している人間は苦しみにも耐えることができると伝えたかったのではないか.どうすれば震災からの立ち直りを促すレジリエンスを実存療法で向上させることができるかに焦点を当てた.