2023 年 21 巻 1 号 p. 62-80
近年,痛みや疲労に関する臨床的な理解は,小径線維ニューロパチー(SFN)にパラダイムシフトしている.SFNは末梢神経のうち小径線維(Aδ線維とC線維)が障害される疾患である.小径線維は優先的に影響を受けることにより,外的および内的環境の脅威を迅速に検知し反応する役割を担っている.持続的なSFNは,感覚神経障害による慢性疼痛や自律神経障害による病的疲労や多臓器障害を引き起こす.SFNの約50%を占める特発性SFN(iSFN)は,ホメオスタシス(恒常性)の歪みによって引き起こされる.臨床家が初期iSFN(iiSFN)の段階で効果的な治療介入を行うことは,難治性の慢性疼痛および慢性疲労である慢性機能障害性身体的苦痛(CDBD)の発症を予防するだけでなく,健康回復や疾病予防につながる.