本稿では最近注目を浴びている算術符号の画像符号化への適用について考察している.まず,マルコフ情報源の符号化に関し,開始状態に応じてその遷移を求めることで,複数のブロック符号を設計し,これを切り替えて使用する状態混在型の拡大情報源符号化処理の問題点を明らかにし,算術符号化処理の持つ利点を再確認した.続いて算術符号とブロック符号を対比させ,いくつかの事項に関してその対応関係を明らかにした.また,これに関連して算術符号における復号終了条件と復号シンボルの有効性の判定法について明示した.最後に,2元算術符号を多値の情報源に適用する上で重要となる2元情報源への変換をはじめ,画像信号の算術符号化におけるいくつかの設計要素について考察した.