抄録
ディジタルカメラ(以下,DSCと略す)の普及に伴い,DSC撮影画像の高画質化の要望がある.その一つの課題はCCD撮像素子の狭いダイナミックレンジにより生じる暗部の潰れを自動的に改善することにある.従来,この改善には,γ変換やヒストグラム均等化手法などが使用されたが,改善程度は十分とはいえなかった.近年,この改善に対してLandにより提案された人間の視覚特性を考慮したRetinex理論を適用する試みが注目されている.これは,二次元に配置された各画素間の空間的情報を有効に利用して暗部の明りょう化を実現する手法である.しかし出力画像に対する調整パラメータの依存性,一様に広いハイライト領域での輝度低下などの課題が指摘されていた.本論文では,これらの課題を解決したRetinex理論に基づくコントラスト改善手法を述べ,実際のDSC画像を用いた実験でその有効性を示した.また,本手法の処理速度の高速化についても述べる.