抄録
現在,運動物体を高速かつ連続的に三次元計測し,動距離画像を出力することのできる装置が現実的なものとなりつつある.このような動距離画像の用途としては,3Dアニメーションや人体の運動解析など,様々なものが考えられるが,計測によって得られた複数の距離画像そのものから,運動情報を得ることは困難である.そこで,これら複数の距離画像間の各計測点の運動を速度ベクトルとして算出したレンジフローを求めることが必要となる.
従来のレンジフローの検出法では,それぞれの距離画像の奥行きそのものを特徴量とし,この一つの特徴量のみを用いて拘束式を立て,その拘束式に様々な仮定にもとづく付加的な条件を加えることにより,レンジフローの算出を行ってきた.そのため,対象の動きにたいして制約が必要であったり,繰り返し法を用いることにより,処理時間が多くなるという問題を抱えていた.そこで,本稿では,距離そのものだけでなく,距離画像の各点固有の特徴量であり,剛体運動によって変化することのない主曲率(最大主曲率,最小主曲率)を特徴として用いることにより,三次元速度ベクトルの各成分を未知数とする独立した三つの拘束式を導出して,物理的な曖昧性を排除し,かつ,繰り返し演算を必要としない高速で精度が高いレンジフロー検出法を提案した.この手法をシミュレーションデータ,および,実測データに適用したところ,その有用性が確認できた.