抄録
著者らは,MPEG-4 Main Profileにおけるスプライトという新しい符号化ツールに着目し,動画像におけるカメラ操作のみを反映した背景領域にスプライトを適用する方法を検討してきた.スプライトが効果的な場合は,従来符号化法に比べて劇的な符号量の削減をもたらすことを明らかにしてきた.一方で,スプライトがどのような画像にも効果があるとは限らないということも知られており,適応的な利用が望まれていた.本稿では,スプライトを適応的に符号化へとりこみ,MPEG-4 Main Profile準拠の符号化システムとして開発した.本符号化システムは,スプライトが効果があると推定されるショットを自動的に抽出するスプライトショット抽出法を取り入れ,符号化品質の向上を図った.また,ストリーミング配信への適用も考慮し,低遅延スプライトに適用する2層ビデオオブジェクトレート制御法を新たに考案した.これにより,コンスタントビットレートの符号化データの生成を可能とした.また,カメラの動きのあるスポーツ映像を用いて,本提案符号化システムの評価を行い,その優位性と適応条件について考察した.