2011 年 40 巻 5 号 p. 851-859
博物館展示では,様々な制約の下,有形無形の文化財を可視化し歴史あるいは文化の表象を行っている.近年の情報化社会においては,情報についても可視化対象となっており,その手段として,画像機器および情報機器等を用いた展示ガイドシステムを活用することが期待されている.本研究では,Augmented Reality技術とプロジェクタ・カメラシステムを用いた展示ガイドシステムについて検討し,古銭資料を対象としたプロトタイプの試作を通して,提案システムの有用性,今後の検討課題について議論する.博物館展示では,展示スペースや照明条件などの物理的な制約だけでなく,資料に内包される情報を伝達する難しさ,資料間あるいは資料背景の叙述方法,展示意図と利用者のニーズとの間の多様性,更には詳細情報の提示と情報過多の調和等の検討課題がある.本プロトタイプを活用することで,利用者に対するメリットを提供するための方向性について考察する.