抄録
動物行動学では,群れの行動を解析するために密度推定を行う必要がある.群れは数個体から数千個体の規模で形成されるものなど様々である.このような群れの行動を記録した映像の解析には画像処理による自動化が必要である.一方で画像処理において,色彩や形状的特徴に乏しい複数の類似物体を個体追跡することは困難である.本論文では,ミナミコメツキガニの群行動解析を目的とし,視覚的特徴が得られない複数類似物体を個体追跡するための密な隣接,重なりに対応できる手法を提案している.具体的には背景差分法により移動物体領域を抽出した後,各移動物体領域から脚領域を収縮・膨張処理により除去し,個体候補領域に対してな隣接や重なりを考慮した評価関数を用いて分布推定を行う.提案手法をシミュレーション実験と実際のミナミコメツキガニの映像を用いた群行動解析実験に適用した結果,従来手法に対しその有効性が検証できた.