本研究では,疾病の発生を未然に防ぐ1次予防を実現するため,研究者や医療従事者のように専門知識がなく,かつ健康に関心の薄い人でも,在宅で長期に渡って継続的に睡眠の質をモニタし続けることのできる技術を開発することを目的とする.睡眠の質は,急速眼球運動を特徴とするレム期とそれ以外のノンレム期からなる睡眠の周期や,それらの期間の量と関係が深いといわれている.そこで本研究では,睡眠中の顔をウェブカメラで撮影するだけで,睡眠中に起こったレムの時刻を記録することのできる手法を提案する.本手法では,近赤外カメラで撮影された映像の各フレームにおいて,顔及び目と眉毛の両端点を検出し,それらから決まる上まぶた横断線分に沿って,明度値をサブピクセル単位で取得する.各フレームで求まる明度値ベクトルを行方向に連結してできる画像から,レムに特徴的なテクスチャを検出することにより,レムの起こった時刻を求める.睡眠時を模擬して閉眼のまま目を左右に動かした場合,さらに睡眠中の場合のそれぞれに対して実験を行ったところ,提案法により眼球運動を検出できることを確認した.