抄録
政策の改正・廃止は,既存の政策を正し資源を有効活用するための重要なステップであり,欠陥を伴う政策の改廃遅延は,物質的なものであれ理念的なものであれ,利益よりは弊害を拡大する。政策の改廃が妥当か否かは主として科学的合理性という観点から評価されるが,非合理と判断され問題視される事例は数多い。こうした科学と健康政策の齟齬に起因する問題は,現行の社会制度・政策過程において古今普遍的な現象と考えられる。本稿は,科学と健康政策との齟齬が生れる要因を科学技術論ならびに政策科学の知見から整理し,それらに基づいて保健医療政策分野における現行の対応と将来にわたる課題について論ずる。