医療と社会
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研究ノート
訪問介護費と事業者密度
山内 康弘
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2004 年 14 巻 2 号 p. 2_103-2_118

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抄録
 2000年4月に施行された公的介護保険は,制度も浸透し,順調に推移しつつあるが,その一方で介護給付費も大きく伸び,提供されているサービス内容については,不正請求が摘発される事例,過度の利用者掘り起こしが生じている事例などが報告されている。そこで厚生労働省は平成15年度予算の目玉として,「介護給付適正化」を打ち出し,この問題に対して本格的に取り組む姿勢を明確にした。本稿は,このような動きを受けて,長年医療の分野で議論が重ねられてきた供給者誘発需要仮説(Supplier-induced demand hypothesis)によるアプローチを活用し,訪問介護市場に潜むモラルハザードの存在可能性を検証した。検証は,主に国民健康保険中央会発表の「介護給付費の状況」及び「認定者・受給者の状況」,社会福祉・医療事業団発表の「介護事業者情報」のデータを用い,いずれも月別・都道府県別によるパネルデータにより,検証期間は2001年6月から2003年3月までの22ヶ月間である。本稿では多種に分かれている介護サービスメニューのうち,「訪問介護」を取り上げ,アクセスコストによる推計上のバイアスを回避することを試みた。その結果,訪問介護市場の競争度が高まると,サービス利用が誘発され,訪問介護費が増大する可能性,また,その誘発は利用頻度の増大によって引き起こされている可能性を指摘することとなった。
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© 2004 公益財団法人 医療科学研究所
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