2004 年 14 巻 3 号 p. 3_51-3_68
本稿の目的は,わが国の非営利性制約と診療報酬規制の制度的仕組みの検討を通じて,公私医療機関の併存システムに伴う資源配分上の問題を考察することである。まず,現行の非営利性制約は私的医療機関の剰余金獲得に関する動機に対して中立的ではないことから,公私医療機関間における経済的誘因の相違を生み出す。また診療報酬規制では,現行の出来高払い方式が診療報酬体系に一定の歪みをもたらすと同時に,医療サービスの投入物選択行動を通じて剰余金獲得の機会を提供する。この結果,公私医療機関の併存システムのもとでは「公私」というproperty rightsの特性を反映した開設者別特徴が見いだされる。これはまた,開設者間における競争が抑制されていることを示唆する。