医療と社会
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委託研究論文
製薬企業における戦略的提携の効果的マネジメント
冨田 健司
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2007 年 17 巻 3 号 p. 285-314

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抄録

 製薬業界では,製薬企業間の戦略的提携が積極的に行われているが,戦略的提携では企業が別々の組織形態を保ったまま協働するため,そのマネジメントは困難を極める。特に,国際戦略提携ではチーム・メンバー間の文化や常識,慣習が異なるため,企業にとってマネジメントは難しい問題となる。そこで,本研究では国際戦略的提携における効果的なマネジメントを探った。
 質問票調査の結果,日本企業のメンバーは同質性を求めていること,提携前からパートナーに対して能力的信頼を抱いていること,そしてアメリカ企業のメンバーはコミュニケーションの機会を求めていることが分かった。
 日本企業のメンバーが信頼を高めるには,提携を結ぶ相手の選択,つまり提携締結以前の選択行動が重要であり,対照的にアメリカ企業のメンバーが信頼を高めるには,提携を結んだ後にコミュニケーションをとることが重要である。また,製薬企業の提携では組織メンバー数が少ないため,境界連結担当者を置かないことも多いが,多くの場合,アメリカ企業のチーム・リーダーは高信頼な人であるため,彼を境界連結担当者として,コミュニケーションや情報交換を行った方が良い。さらに,境界連結担当者を中心にして,各々のメンバーが自由にコミュニケーションをとることのできる提携組織形態が望ましい。

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© 2007 公益財団法人 医療科学研究所
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