医療と社会
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特集論文
韓国の医療制度
岡本 悦司
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2008 年 18 巻 1 号 p. 95-120

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抄録

 韓国医療制度の発展の歴史を,戦前の資料も発掘して概説するとともに,現在の医療保険制度の仕組を概説する。19世紀には,欧米の宣教師らが西洋医学をもたらし病院を作った。1910~1945年の日帝時代には医療従事者の多数を日本人が占めていた。日本人は終戦(光復)とともに引き上げたが,病院等のハードウェアは戦後の韓国医療の基盤となった。ただ日本が1927年に導入した医療保険制度は当時の朝鮮に導入されることはなく,医療保険は韓国が自力で作ることとなった。朝鮮戦争を経て,1960年代には「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展が起こり,民間病院や医大の量的拡大が続いた。1963年には医療保険法が制定され1989年には皆保険が達成された。1997年の経済危機を契機に医療保険の統合一本化,医薬強制分業そして請求書のオンライン化が進められ2000年に達成された。現在の医療保険は国民健康保険公団という単一保険者で運営され,被用者と自営業者の所得補足格差は,自営業者については申告所得だけでなく財産や自動車も加味して賦課することで解決している。患者負担率は医療機関の種類によって差を設け,医療機関間連携を促進しつつ,またDRGの試行やオンライン化された請求書情報をデータウェアハウス化して積極的な活用を審査評価院において行っている。

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© 2008 公益財団法人 医療科学研究所
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