医療と社会
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特集:健康格差の社会経済的要因
贅沢病は裕福な人に多いか
健康格差に関する一般意識と実態
福田 吉治
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2012 年 22 巻 1 号 p. 31-39

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抄録

【目的】 所得,学歴,職業等の社会経済的要因に伴う健康水準の違い,すなわち健康格差が注目されている。本研究は,主要な生活習慣病および健康関連生活習慣と所得との関係について,一般住民の意識ならびに実態を調べることを目的とした。
【方法】 一般住民の意識調査として,山口県の4つの自治体から無作為に抽出した30~59歳の男女650名を対象に,裕福な人がそうでない人に比較して健康問題になりやすいかどうかについて自記式郵送調査を行った。実態調査として,国民生活基礎調査(平成19年)を用い,所得と健康問題との関連をRelative Index of Inequality(RII)を指標に分析した。
【結果】 一般住民の意識調査では,650名のうち363名より回答があり(回答率55.8%),うつ病を除く全ての疾病(糖尿病,高血圧,脳卒中など)で裕福な人ほどなりやすいと回答した者の割合が高かった。喫煙や過剰飲酒は,裕福な人ほど少ないと回答した者の割合が高かった。実態調査では,脳卒中,心臓病,うつ病,喫煙で,所得が高い人ほどその割合が有意に低かった。
【考察】 本研究から,生活習慣病やそのリスクとなる不健康な生活習慣は総じて所得の低い者に現れやすいが,一般住民には逆の意識があることがわかった。健康格差についての認識,すなわち,社会経済的に不利な状況は生活習慣病のリスクを高めることの認識を高めることが,それらのリスクを低下させることに繋がると考えられる。

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© 2012 公益財団法人 医療科学研究所
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