医療と社会
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特集:人生の最期をどう生きるか,どう支えるか,どう迎えるか
超高齢社会における医療・介護
大島 伸一
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2015 年 25 巻 1 号 p. 49-57

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抄録

超高齢社会の急速な進行によって,医療需要の重心が高齢者層に大きく移動しており,医療のあり方,医療提供のあり方について,バラダイムの転換が求められている。
20世紀は「治す医療」を展開し,大きな成果を得た時代であった。治すとは臓器の傷害の原因を見つけ,これを取り除くものである。60歳台までは,病気は一つの臓器に一つの傷害として現れるため,「治す医療」への要請は高かった。しかし,平均寿命が80歳を超えた21世紀では,老化という過程に生活習慣病が加わる慢性の全身疾患という病態への医療需要が最大なものとなる。
高齢者では,全身との適正な均衡状態を考慮に入れずに,一臓器の傷害を治そうとすれば,全身と個別の臓器機能との調和に不都合が生じ,全身状態が悪化する。そのため高齢者の医療ではただ治すだけでなく,その人が求める生活が実現できるように自立機能を整えて支えてゆく医療が必要となる。
もう一つは,病院中心の医療から地域全体で診てゆく医療へのパラダイムの転換である。日本は,これまで誕生から死までの全てを病院で行う医療の提供体制を構築し,皆保険制度で支えてきたが,その限界がはっきりと見えてきた。
今後は,財源にもサービス提供にも限りがあるという理解のもとに,医療の有効,効率的な提供方法として,病院には病院にしかできない機能に特化し,医療・介護を一体的に地域全体で提供してゆく体制に変えなければならない。

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© 2015 公益財団法人 医療科学研究所
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