医療と社会
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高齢者のための長期ケアの供給者に関する規制とインセンティブの実証研究
小椋 正立大石 亜希子
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キーワード: 出来高制, 定額制, 老人医療
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1995 年 4 巻 2 号 p. 70-108

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抄録

わが国では,介護のための専門的な施設の整備が遅れており,介護サービスのかなりの部分を医療機関が供給してきた。また投薬,注射,検査など出来高払いの対象となる医療の過剩供給も従来から問題にされてきた。しかし,病院が直面する経済的なインセンティブは,ここ数年間の医療保険制度のドラスチックな改革て激変しつつあり,これに病院は急速に対応しつつある。
まず,1)出来高払いの対象となる病院の収入は,入院期間に応じて急速に逓減するンステムに変えられ,長期入院は減りつつある。さらにわれわれの研究では, 2)1990年の診療報酬改定によって導入された定額払い方式は, 従来の出来高医療の持っていた過剰な供給のバイアスを除去したことを見た。しかし,このことはわが国の長期ケア制度が,新たな三つの問題に直面していることを意味する。第一に,現行の制度では,出来高制と定額制の入院期間に関するインセンティブが整合的でないため,早晩,定額制度施設の不足は必至である。第二に,定額制の施設における医療の質をどうモニターするか確立しなければならない。第三に,ケアの客観的なニーズに応じて,定額制の施設が十分なケアを供給できるようなインセンティブメカニズムを確立することである。

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