抄録
先頃EuroQol Groupにより,正規の日本語版EuroQolが認定を受けている。EuroQolは,相当に単純な質問票を用いて患者や健康な一般人口の健康水準を測定するためのシステムであり,いくつかある同様のシステムのうちで,目下のところ公式に日本語へ翻訳された唯一のものである。日本でのEuroQol研究はその端緒についたばかりであるが,この論文は今後の研究の課題を整理するという目的で書かれた。
この論文は,健康水準の評価方法に関する比較研究の一環として実施されたEuroQolの臨床版質問票から得られたデータを紹介・分析するものである。この調査は,住民票から無作為に抽出した18歳以上の京都市左京区住民1,390名を対象に,郵送で行われた。回答数(率)は676名(48.6%)である。調査は,EuroQolによる健康水準の測定を本来の目的としたものではないため,いくつかの不備がある。しかし,回答者にとってEuroQolの質問票が非常に理解しやすいものであることや,EuroQolの妥当性の一端が明らかとなった。また,同時期に行われた別な調査の結果との比較を通じ,面接法かあるいは郵送法かという調査方法の違いについても考察している。
今後の日本におけるEuroQol研究の最大の課題は,日本独自のHRQOLスコア換算表の必要性の検討と(必要であれば)換算表の推定である。それ以外にも,本調査のようないわゆるpiggy backstudyではなく一般人口の健康水準の測定そのものを目的とした調査や,特定疾患の患者を対象にした5Dの感度ならびにVASの妥当性の検証,調査法によるHRQOLの違いなどの研究が求められている。