抄録
脳性麻痺児の中には、コミュニケーションに問題を抱える者が多くいる。筆者らがかかわる機会を得た脳性麻痺児は、特別支援学校中学部に入学してから同高等部を卒業するまでの6年間、学校で全くと言ってよいほど発話を行わなかった。ただし、自宅では自発的に発話を行い家族との会話を楽しんでいた。本研究では対象児がどのような状況で発話を抑制するのかを参与観察を通して明らかにするとともに、かかわり手が対象児に対して性急なかかわりを控えることで発話が行われるかを確認することを目的とした。その結果、①対象児の発話の抑制には場所の要因よりもかかわり手の影響が大きいこと、②かかわり手が性急なかかわりを控えることで対象児の発話が行われるようになることが確認された。対象児の発話を抑制させる要因は、「性急に向かってくるかかわり手が存在する状況や環境」だと考えられた。