Journal of Inclusive Education
Online ISSN : 2189-9185
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日本の通級指導のはじまりに関する 歴史的検討
-障害種別を横断した教師の実践・親の運動・専門家の参加と教育行政に着目して-
浜 えりか
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 11 巻 p. 68-82

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抄録

本研究の目的は、日本の通級による指導(通級指導)がどのように開始されるに至ったのか、特にそのはじまりとなる要因を明らかにすることである。現在の「日本型インクルーシブ教育システム」において、通級指導は重要な位置に置かれている。しかし、そのような重要性に比して、これまでの研究では、通級指導の歴史研究が僅かしか見られず、そのモデルはアメリカのリソースルームであるとする研究が見られる。しかし、それらはアメリカの制度から見た研究であり、日本の歴史資料からは検討されていない。そこで本研究では、1993年通級制度化当初、通級指導が適応された言語障害、難聴障害、視覚障害、自閉症/情緒障害に着目して日本の通級指導の始まりの要因を探った。その結果、それぞれの障害種別特有の背景に起因した変遷があったが、共通点として、教師の実践や行動、親の運動、医師や研究者などの専門家の参加と教育行政の動きによる障害種別学級の設置実現の様子が確認できた。 この結果から、日本の通級指導のはじまりの段階には、多くの人々の願いと行動という背景があり、通級指導の制度を作り上げた要因の1つであるであろうことが示された。

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© 2022 一般社団法人アジアヒューマンサービス学会
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