抄録
本研究は、大学の講義においてResponse To Intervention(以下、RTIモデル)を援用した多層指導を実践し、受講している学生の成績にどのような影響を与えるのか、特に学習に困難さを抱える学生の抽出ならびに付加的な指導の有効性を検討した。対象は筆者が担当する講義の学生110名であった。第1層指導では、全受講学生に対し、リアルタイムオンライン型もしくはオンデマンド型講義を行い、その中で学びのユニバーサルデザインを取り入れた実践を行った。そこで、毎回の講義後に実施していた小テストの結果が平均60%未満、もしくは欠席回数が2回以上であった学生を第2層指導の対象者として、リアルタイムオンライン講義に参加するように告知し、参加した学生には小集団の指導が行われた。この結果、第2層指導の対象となった学生は全受講生のうち約15%となり、小集団指導に参加した学生は小テストならびに出席率の改善がみられた。一方で、小集団指導に参加しない学生が大半を占めた。以上の結果から、大学の高等教育におけるRTIモデルを援用した多層指導は、第1層指導として学びのユニバーサルデザインを取り入れることで約85%の学生の学びを担保しつつ、学びに困難さのある学生の抽出に有効であること、第2層指導として小集団指導の実践は効果的であるものの、参加率の低さといった課題があることが示唆された。